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目の前の道は通ってきた道ととてもよく似ているが、微妙に違う気がした。
さっき歩いた道はこんなに枯れた木が多かっただろうか。
そのときはそこまで不安を感じなかった。きっと、いつもと山の様子が違うから、今まで見慣れていた道もまったく違う風景に見えてしまっているのだ。
しかし歩けば歩くほど全然知らない、見たこともない景色に変わっていく。私は悟った。
遭難したのだ。
葉をつけた木も徐々に少なくなり、病気のようななよなよした弱々しい木が目立つようになってきた。
前方で何か黒いものが蠢いているのが見える。
猪だった。
死んだ一頭の猪を三頭が囲んで、一心不乱に仲間の身体を貪っている。
三頭ともガリガリに痩せ細っていた。おそらく餌がないのだ。
肉を噛み千切る生々しい音が聞こえてきて気持ち悪くなり、速やかにその場を離れた。
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