飢える山

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驚いて戸を見つめていると、衝撃に耐えかねて戸は破れ、何かが勢いよく飛び出してきた。 大きな猪だった。 そのままもの凄い勢いでこちらに突進してくる。 私は命の危険を感じて必死に小屋の外に逃げ出した。 猪の目は血走っており、ひどく興奮していたが、幸い私に目をくれることなく猛然と森の中に消え去った。 私は破裂しそうな心臓をおさえ、息を整えていると、小屋の中から漂ってくる異臭に気がついた。 ゆっくりと玄関に入り靴を脱ぐ。そして貫かれた戸の向こう側を見た私は、絶叫していた。 腹を喰い破られた老婆の見開かれた目が、うらめしそうに私を見上げていた。
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