乗客

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ぼくはこの夏休みを利用して、祖父母の住んでいる田舎町に出かけることになった。別に行きたいと思って行くわけではなかった。夏休みに祖父母の家を訪れるのは毎年恒例のことなのだ。あまり気が進まなかったが、祖父母はぼくに会うのを楽しみにしているので行かないわけにはいかない。 でも今年は共働きの両親は忙しくて行けないらしかった。両親は忙しいけれど、ぼくは暇をもて余していたので、「お前も大きくなったんだからひとりで行け」と父に言われた。今までは両親の運転する車に乗って行っていたが、ぼくが運転するわけにもいかないので、地元の電車に乗ってK駅で降り、そこからバスに乗り継いで祖父母の家へ行くことになった。 午前十一時発の電車に乗ることになっていたけど、昼から部活の大事な試合(ぼくはレギュラーだったので抜けることはできなかった)があったのを思い出し、部活参加後に電車に乗ったときには時刻は午後六時を過ぎていた。
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