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液体は墨汁のように真っ黒だが光沢がある。液体が通った壁には細かい水滴も一切残っていないところをみると、ゼリー状なのかもしれない。
やがて視線の先の謎の黒い液体は床に到達すると、生きもののごとく蠢き始めた。
目を逸らしたかったが金縛りのせいでできなかった。
液体は製作中の粘土作品のように次々と形を変える。犬になったり、山羊になったり、人間になったり……。
そしてついに私が恐れていたことーー液体が蛇の形をとり、身体をくねらせながら私に近づいてきたのである!
来ないで!私は心の中で叫んだ。来ないで!
しかし、そんな私の心の叫びとは裏腹に、奴は近づいてくる。舌をチロチロ出しながら、ゆっくりと。
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