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もうだめだと思ったその時、部屋の扉が開けられる音とともに金縛りが解かれた。眠そうな目をした母が顔を出す。
「いつまで勉強やってるの。体壊すからそろそろ寝なさいよ」
母はそれだけ言い残して扉を閉めた。
私はすぐに自分の足元、そして部屋の一角へと視線を移したが、気味の悪い黒い液体などどこにもなかった。
それからもその部屋で勉強を続けたが、再びそいつが目の前に現れることはなかった。
そして努力が実って私は志望校に合格し、家を離れて寮生活に移った。そこでは友達も多くできて充実した日々を送った。
時々真っ黒な物体の気配を感じることがあったが、私はそれを気のせいだと思っている。
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