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長かった学生生活も大学卒業と同時に終わりを告げ、俺は晴れて社会人となり、社会への第一歩を歩み出した。
俺こと、橘慶太(たちばな けいた)は過酷な就職活動と言う戦争を何とか生き残り、業界では名の知れた外食チェーン、日野フーズと言う会社から内定を頂き、今こうして満員電車で人々に揉まれていた。
ちなみに日野フーズは外食産業だけでは無く、リゾート開発から果ては老人介護事業と、バラエティに富んだ展開を行っていた。それだけ儲かっているのだろう。
しかし特段、俺はこの日野フーズで働きたい訳ではなかった。
本当は航空業界で働きたかったのだが、跳ねられまくってしまい、妥協に妥協を重ねた結果、唯一内定を貰ったこの会社を選んだのだ。
しかしまぁ、この日野フーズには感謝している。
もし日野フーズに内定を貰えなければ、今頃どうなっていたことか。
考えただけで恐ろしい。
一応大手であることは変わらないし、初任給もなかなか良い。
ここは気持ちを切り替えて、恩人の日野フーズの為に働こう。
俺はそう決心し、車内の広告から窓の外へと視線を移した。
そう言えば、今日の夕方から雨が降るらしい。
そのせいか、空はどんりとした鉛色だった。
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