1.それは恐喝と呼ぶべきじゃ?

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  「チッ」 目が覚めて状況を理解した瞬間、私から零れたのは舌打ち。 鬱陶しく顔にかかった髪をかきあげて、小さく深呼吸と、ついでにため息。 「ドラマじゃないんだから」 なんて呟いて、隣で眠る男を見れば、呆れる程のドラマな展開に、漏れたのは嘲笑。 酔った勢いでヤッちゃって、挙句相手はイケメン。 これで、この人が金持ちだったりしたら、最早ギャグね? ただ、今時ありふれすぎてて、こんなんじゃ全く笑えない低レベルな、ギャグ。 ……とりあえず。 面倒な事は回避するに限る。 さっさとココを後にして、無かった事にするのが一番。 もう二度と会わないであろうイケメンさん。お元気で。ごちそうさまでした。 覚えてないけど。 * * * あのイケメンさんとの朝から1週間。 携帯を拝借して私の番号を検索すれば登録があったから、ソレは削除した。 ヤり逃げは失礼だから、適当な金額は奴の財布に忍ばせてきた。 痕跡はキレーに消した。多分。 よって、あの一夜は抹消。 の、筈だったのに。 「だから、笑えないってば」 なんて、思わず口に出そうになったのは、目の前にあのイケメンさんが現れたからで、 って言うか、や、こーゆー設定のドラマとかね?漫画とかね?ケータイ小説とかね?見た事も読んだ事もあるわよ?? でもね?こっんな都合の良い事、リアルで起こっちゃダメだろ?? や、違う。 私にとっちゃ、都合が悪いんだった。 マジ、ウザイ。 やっと見つけた再就職先。 それなのに、よりにもよってそこの御曹司がこの間のイケメンって。 こんなバカみたいな設定はツクリモノの中で充分なのに、何故にこの身に起こるよ!? え? 何?私、何か悪い事した?? 日々、真面目に、……は兎も角、一生懸命生きてるってのに、何なのこの仕打ち! 神様が実在するのなら、是非みぞおちに一発入れたいトコだわ。 「久し振り」 ふと降って来た声に、小さく息を呑む。 気付けば、この御曹司の部屋に二人きりの状況で。 私の頭は、超高速回転で出方を探ってて、 「……初めてお会いするかと思いますけど」 出た言葉は、コレ。 必殺、なかった事に。って事で、納得してくんないかしらね? 「まさか、忘れた。とでも?」 「忘れた。と仰られましても、何の事か解りません」 あぁ、猿芝居。  
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