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夜風が小柄な少女の髪を揺らした。
彼女は深紅のスカートに黒一色のコートで身を包み、夜の闇と溶け合うかのようだった。
表情は幼くまだあどけなさが残る。
年齢は十代半ばといったところか。
「ホノカ、準備はいいか?」
どこからともかく、これまた黒いコートに身を包んだ男が少女に声をかける。
少女より頭一つ分背が高く精悍(せいかん)な顔つきで、蒼い瞳が目立つ。
ホノカと呼ばれた少女は、ふところから動物の角を加工したような笛を取り出す。
「いつでもどうぞ」と応えた。
少女が角笛を口元にあてると男は腰の長剣に手を伸ばす。
月明かりのもと廃墟の街を舞台にして、かくて魔物狩りは始まる――
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