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引っ込めた舌を引きずり出され、甘噛みされる。わざと立てられる水音。感じる視線。腰をなぞる、掌の感触。こいつの全てに、溶かされる。
「…っ、はぁっ、はっ…!」
長いキスから解放されたときには、俺の息はあがりきってしまっていた。
「…エッロ…」
何か屋島がつぶやいたが俺はそれどころではない。酸欠でくらくらする頭を屋島の肩口に預けて身体を支える。
くっそスポーツマンの肺活量とんでもねぇ。こいつ全く呼吸を乱してねぇ。
「…っ、屋島、てめ、しつこい、んだよ…!」乱れた呼吸を整えながら屋島を見上げると。
屋島の息を飲む音が聞こえる。
「…も、なんなの、坂下…その顔は、ダメだって…」
そう言って、ぎゅうっと俺を抱きしめるそいつはいつもの屋島で。ちょっとほっとする。
「…お前、顔真っ赤」
「…るっさい」
「心臓、すっげぇ速ぇよ」
「言うなばか」
拗ねたような口調がかわいい。こいつでも拗ねたりするんだ。
「ていうかなんだよこの態勢。俺が屋島を抱きしめたいんだけど。」
形成逆転を図るため、まずはこの状態への不満を述べる。
「坂下が勝手に俺のシャツ掴んだんだろ」
が、あえなく失敗。
「はっ、!いや、これは違くて!いやそういうことじゃなくてっ!なんか、ほら、…全体的に逆っていうか!」
しどろもどろに言い訳するはめに。
「…かわいい坂下は俺に抱きしめられてたらいいの」
「んなっ!かわっ…?!」
こいつまた俺にか、可愛いとからいいやがった…!頭湧いてんじゃねぇのか?!
「わかったら大人しくしてろよ…?」
「…?!」
あ、あれまたなんかいつもと違う屋島が…?!
「あ、俺二重人格だからなー」
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