深淵の虫

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11月12日(木)曇り 朝、学校に行ったら僕の机に大きく『虫』と彫られていました。彫刻刀で彫った様です。 削りカスもそのままになってます。チクチクしてとても嫌でした。 奥田が彫刻刀を持って机を彫る真似をしてきましたが、また黙っていました。 そしたら『シカトするんじゃねぇ』と叫んで僕を殴りました。 痛かったです。 11月13日(金)曇り 13日の金曜日。とうとう僕を本名で呼ぶ人はいなくなりました。 目の前で奥田が出席簿の僕の名前の部分を修正液で消しています。 上から『虫』と書いて僕に見せて来ました。連絡簿や下駄箱の名札もやられました。 もうこの学校で岩本亮平という人間はいません。 僕は虫です。 11月14日(土)晴れ 机の中に虫が入っていました。セロテープで『お前の友達』と書いた紙が貼ってあります。 奥田の字でした。セロテープをはがすと皮も一緒にはがれました。 まだ生きていましたが指でゆっくりつぶしてやりました。 汁が垂れる感じがとてもかわいらしく、何度も何度もグリグリしました。 快感です。 11月15日(日)晴れ 学校がない日がこんなに待ち遠しいと思ったことは初めてです。 親も僕の心のSOSをキャッチしてくれません。 唯一妹の早紀だけが『お兄ちゃん最近元気ないね。何かあったの?』と気遣ってくれます。 僕は『別に。』と答えて自分の部屋に入りました。泣きながら早紀の似顔絵を描きました。 切ないです。
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