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「うわ、ホントに冷たいや」 「でしょー?」 「末端冷え症?」 「そうかも」 「女子じゃん」 なんて笑う。 話しながら、 ぎゅ、と手に力を込めてみる。 するとすぐに、彼も手を握り返してくれた。 どきどき、する。 自分の力じゃない、他人の、男の子の、好きな人の、力。 彼の手の冷たさは、だいぶ緩んでいた。 「どこまで力込めていいのかわからない」 そう、私の手を握ったまま、彼が呟いた。 あたしの手や指が、彼にはそんなに壊れ物のように見えるのだろうか。 たしかに、自分の手を見ているだけじゃわからないけど、彼の手と比べると、自分の手が随分と小さく見える。 爪なんて、半分くらいしかない。 ああ、あたしって女の子なんだなぁ、なんて、こんな所で実感してしまう。 「別に、壊れたりしないよ」 そう言うと、さっきより強く、でも控えめに、私の手を握ってくれた。 バスの揺れが心地良い。 彼の肩に、頭をもたれる。 座るとね、貴方が近いから好きなの。 「なんか、眠くなってきちゃった」 「いいよ、寝ても」 彼はそう優しく笑う。 その笑顔が、声が、すごく好きなの。 本当に寝るつもりなんて勿体ないからさらさらないけど、あたしはちょっとだけ眼を閉じた。 君と手は繋いだまま。 ずっとこのままだったらいいのに *このまま離さないでいて。*
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