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「俺これ、隣に座ったほうがいいの?」 「あたしの隣が嫌じゃなければ」 そう言うと、彼はちょっと嫌そうな顔をして、でも隣に座ってくれた。 あたしも続いて彼の隣に座った。 ホールの椅子は、相変わらず安っぽかった。 足元にサブバッグを置いて、膝の上にリュックを置く。公演の日は、荷物が増えるからちょっと嫌だ。 「ほんと、見に来てくれてありがとね」 「どういたしまして」 あたしがお礼を言うと、彼はぶっきらぼうに返した。 今日は、私たちの演劇の公演。公演といっても、単独公演ではなく、近隣の高校の演劇部が、この市立の文化会館に集まって公演をするものだ。私たちもその中のひとつというわけだ。 私たちの舞台はさっき終わって、見に来てくれた彼と合流して、一緒に他の学校の劇を見ることにした。 次の公演待つホール内は、少しざわついていた。 雨が降ってるのに、彼が住んでるところからは、この会場は遠いのに、彼はわざわざ私たちの舞台を見に来てくれた。 嬉しくて、少しだけ期待してしまうじゃないか。 .
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