十子さんの吠える日々

新たな依頼

「それで今日はどんな用かな？」

十子さんの正面に座ると、鈴木市長が尋ねてきた。

目に楽しそうな表情が浮かんでいる。

これが曲者なのだと十子さんは思った。

何でもないような顔をして、時には笑顔まで浮かべて、人の話を聞きながら頭の中では自分の打つべき最適な手を構築している。

食わせものなのだ、この男は。

でなければ、何年も市長の椅子に座り続けているはずがない。

しかも、選挙のたびに圧勝している。

議会との軋轢もない。

そんな男の尻拭いが本当に必要なのかと、十子さんは内心ため息をついた。