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利恵子は真面目に勉強をしていたらしく、彼女の机の上には、英語のテキストと英和辞書、そして鉛筆でぎっしりと英文の書き込まれたノートが広げてあった。
利恵子は私と違って勉強熱心だ。
学年でも常に五番以内の成績を維持しており、誰からも秀才であると認められていた。
もっとも私としたところで、特別に勉強をしなくても、常に学年で二十番くらいの成績を維持しており、四百人という一学年の人数から考えたときに、それは決して悪いものではない。
それでも、双子であるが故に比較され、本来受けるべきであろう評価よりもずっと低い評価しか与えられないことも少なくはない。
もっとも、私は利恵子のように勉強するつもりもなかったし、成績についても興味は無かったので、周りの人間に何を言われようが、大して気にはならなかった。
だから、そんなことで私は利恵子を悪く思うこともなかった。
なにせ私と利恵子は双子なのだ。
私は利恵子であり、利恵子は私なのだ。
私は利恵子が大好きだ、本当に。
ふと利恵子を見ると、CDケースを手にしていた。
よく見てみると、それは私のお気に入りのロックバンドの新作で、今日発売されたばかりのものだった。
利恵子はCDケースを包むセロファンをはがし、続いて机の中からポータブルCDプレイヤーを取り出した。
利恵子は実に楽しそうに、CDをプレイヤーにセットしようとしている。
「ちょっと待って」
私が声をかけると、利恵子は手を止めて私の方を向いた。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
「それって、今日発売の新作アルバムでしょう?」
「そうだよ」
利恵子はそう答えると、ニコリと微笑んだ。
「そのアルバム、私も聞いてみたかったのよ。貸してくれない?」
私の要求に、利恵子の表情は曇った。
それもそうだろう、なにせ、利恵子もまだそれを聞いていないのだ。
それも、自分の金で買ったにもかかわらずだ。
だけど、私はそんな利恵子に畳み掛けるように言った。
「ねえ、あなたと私は双子よ。あなたは私で、私はあなた。これまでもいろんなものを二人で仲良く分けあってきたでしょう?」
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