ズルい思考と欲と

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*  強引かと思えばものすごく謙虚な奴で、勝手に俺のテリトリーにスルリと入り込んできた葛西。  だけどこれ以上、この距離を縮めることも遠ざけることも嫌で今の距離をセーブしている。  アイツは馬鹿だから……いや、俺に気を遣ってるんだろうが。  あれからは好きだとかなんだとか、俺が困るようなことは一つも言わない。  馴れ馴れしく体に触れるようなこともしない。  隣を歩いていても、明らかに10センチは距離を保ってやがる。  時々一生懸命小石を蹴ってる姿が笑えて、横で笑ってやるといつも恥ずかしそうに笑っている。  だけど止めないアイツが面白い。  面白いと思うけど、それが好きと言う感情に繋がるのかと言えばYESとは言い難い。  可愛くないと言えば嘘になる。  気にならないと言えば、答えはNOだ。  けれど手を伸ばしそうになって、寸でのところで手の平が拳を握る。  意地を張ってるわけじゃない。  ただ、どのタイミングでそうすればいいのか見えなくて。  差し出した手を掴んでもらえなかったらと思うと不安で。  もしかして、もう俺への興味なんてないんじゃないかと思えて仕方なくて。  気持ちの定まらないまま、笑う葛西の顔を潰したくなくて。  おやすみと共に送られてくる葛西の日常を綴ったメールに安堵しながら、ただおやすみとだけ送って携帯を閉じた。  メールだけは送れと言いながら、俺からは大した返事もしない。  けれど、これだけは止めて欲しくなくてつまらない独占欲が顔を出す。  これは―――ただの先輩として、許される独占欲の範囲なんだろうか……  モヤモヤしながら俺は瞼を閉じた。 *
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