ズルい思考と欲と

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 奇跡!!  まさに、奇跡かもしれない!!  先輩が私を野球に誘ってくれるなんて、天と地がひっくり返るくらいの驚きな出来事だ。  というか、もはや天地はひっくり返ったのか!?  いやいやいや、電車は正常に動いてるよー!!  ……って、気が動転しすぎた私はそのままの勢いで、喰いつかんばかりに先輩に質問をしていた。  私の憧れ、叶えてもいいってことだよね?  タオルを差し出したり、これどうぞとかってドリンクを……ダメ! 想像だけで幸せすぎる。  今まではリアルに想像できなくて、ただ野球部の子の話を聞いてはいいなぁって思ってたけど。  誘ってもらえたとなれば、それは自分に置き換えてリアルに想像しちゃう。  わぁあ、どうしようどうしよう!!  ぴょんぴょん飛び跳ねてしまいそうな体を何とか椅子に座らせて、私は食い入るように先輩を見つめた。  そんな私を、先輩は若干引いたような目で見ている……気がしなくもない。  けど、関係ないもんっ。  私はYESの返答が聞けるのをただただじっと待った。  じーっと、じーっと見つめると、先輩は困惑気味ながらもようやく  「あぁ……いいけど……」  って言ってくれた。  やったー、やっほーい!  念願のマネージャー気取り、やらせてもらえるんだ。  うふふー。  一人嬉しくてニヤニヤしていたら、耐え切れないと言わんばかりの勢いでべしっと頭を叩かれた。  「……葛西。気持ち悪すぎるぞ」  「ったぁい。そんなこと言ったって、先輩が悪いんですよ」  「はぁ? なんで俺が」  「だって、嬉しすぎるから」  なんて問答をしていたら、私たちの降りるべき駅に電車が到着した。
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