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こいつは、どこへ遠足に行くんだ……?
俺の想像を超える荷物に、大丈夫か? と聞いてしまった。
本人は質問の意図が分からないのか首を傾げ、大丈夫ですと答えたが。
いや、隣を歩く俺が大丈夫じゃない。
葛西の家から出てきた母親は、聞かなくても分かるくらいにコイツそっくりで。
さぞや賑やかな家なんだろうって一瞬で分かった。
しかも第一声が
「ごめんなさいね。今スカート脱がせてるから」
って。
脱がせてるってなんだ?
とか思っていたらジーパン姿の葛西が満面の笑みで出てきた。
よく分からんが、スカートでないことにホッとした。
スタンドに立ってたら、ダメだろスカートは。
―――しかし、俺が女連れてきたって、皆ビビるだろうな……
まだ誰にも葛西を連れていくことを言ってない。
そのことを今頃になって少し後悔する。
いや、言ってないことよりも、葛西に声をかけたことを、か?
なんて思いながらも、嬉しそうな葛西を見ると、どうでもいいかと思えた。
誰に迷惑をかけるでもなし、楽しんでる奴が一人増えたって問題ないだろ。
他愛もない会話をしながら、何度か荷物の多すぎる葛西に『持つぞ?』と提案するも拒否されて。
なんだか荷物持たせみたいな気分を抱きながら、近くのセンターまで15分の距離を歩いた。
隣の葛西は、いつもよりも少しだけ俺に近い距離で歩いている気がする。
遠慮がちでもなく、心底嬉しそうに「どんなところですか?」なんて尋ねる葛西。
「普通」
つまらないだろう返事をしながらも、そんな葛西を俺は、少しばかり可愛いと思えた。
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