ズルい思考と欲と

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 *  「あれ? 西村ってさ。友香ちゃんのこと、友香って呼んでなかったっけ?」  ついてこなくてもいいのに、俺の後を追いかけて後ろから話しかけてくる進藤。  ―――チッ、うっとうしいなぁ。  「なぁなぁ。友香ちゃんってお前の何?」  「うっせ」  答える気なし、という意味を込めてただそう返事をすると、後ろからくすくす笑い出す進藤。  俺のことをよく分かってる奴だけに、俺がこれ以上言うつもりがないのもお見通しで、その上で笑ってやがるからたちが悪い。  「つーかさ。西村この後どうすんの?」  「……帰る」  「マジで?」  「っせーな。葛西いるし、俺いなくたっていいだろ」  進藤の言いたいことは分かってる。  いつも先輩んちで集まってみんなで反省会と称した昼飯と、そのあとのバカ騒ぎ。  多少派目外して酒ぐらいはちょこっと出たり。  面倒くさいと言いながら、なんだかんだでみんなこの後のことは楽しみにしてるわけで。  空気壊したくないという意思も働いてか、余程のことがない限り誰も辞退しない。  ましてや今日は……  「やっぱ、負けたか」  逆転敵わず、負けてしまった―――  先輩同士の「どっちがいい後輩を育てられたか」とかいう、今さらだろうバカげたメンツをかけての戦いに。  「まずいだろ、今日は」  後ろで未だにニヤニヤした進藤が、俺の肩にポンと手を置いてそういう。  けれどその本心は、全くそうは思っていないと伺える。  それよりも、俺が空気を壊すこと承知でブッチしようとしてることの方が、楽しくて仕方がないって声音で推測できる。  それがさっきのことと相まって俺をイライラさせた。  「っせーな。いいんだよ」  バシッと肩に乗る手を払いのけてそう言うと  「ハートマークのメールの子。あの子だろ? お前さー、認めとけば? そろそろ」  「は?」  「いい子は放っておくと、持ってかれるぞって。じゃ、まぁ頑張れ」  「お、おい!」  進藤は俺の背中を思い切り叩いて、そのまま手をひらひらと振って走って行ってしまった。  ―――頑張れって、なんだよ。  *
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