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試合が終わって、ざわざわとみんなが動き始めたのを上から眺めていた。
二階で眺めているのなんて私だけだから、誰もこっちを見たりしない。
知らない人たちが、ちょこちょこと動く様子を見つめながら、時折尚人先輩が視界に映るのが嬉しかった。
どうしてなんだろう……
顔がかっこいいとかってことはない、と思う。
背だって、高くはない。
先輩がモテるなんて話も聞いたことがない。
まぁ、そんな人滅多にいないだろうけど。
だけど、それなのに―――どうしてなのか、私の視界には輝いて見える。
パッと光ってるのが先輩。
どんなに人に紛れてても、すぐに目に留まる。
だから、先輩に目が行ってしまう。
ずっと。
好き、だと思う、先輩のことが。
でも、先輩は私のことは恐らく……と感じるから、これ以上気持ちを膨らませちゃいけないって思う。
それなのに、名前で呼んだりするから。
そんなこと、先輩がするから。
私は一瞬でキュンとなる。
やっぱり好きだって、思ってしまう。
いつも通りそっけなくしてくれたらいいのに、こうやってこんなところに連れてきてくれて。
だから先輩の予定なんて何にも考えずに、お弁当なんか作ってきてしまうんだ。
何一つうまくいかない私は、ただただ自分のしたいことばかりを押し付けて。
それで先輩を困らせながら、自己満足ばかりを実らせてしまうんだ。
―――断ろう。
友香って呼ばれて有頂天になりかけてたけど、今日という日に、私のためにこの後の集まりを抜けるだなんてダメだ。
先輩は責任感があって、後輩想いで。
みんなの司令塔的な存在で。
ここに連れてきてくれただけで、十分。
家までの道のりはちゃんと分かるし、一人でだって帰られる。
だから、一緒には帰りませんって言おう。
みんなに囲まれて笑う先輩を上から見つめながら、私はギュッと手のひらを握り込んで決意した。
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