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―――やっぱりな。
思った通り、葛西は落ち込んで地面にめり込んでいた。
どうしてこう、コイツって分かりやすいんだ?
しかもいつも通りに石を蹴って、足を痛めたみたいなオマケつき。
俺は別に、コイツのことが分かるエスパーになんかなりたくないのに。
葛西のことは、なぜだか分かってしまう。
「ここで、いいだろ」
公園にある、どおってこともないベンチの上にドスンと葛西の荷物を下した。
ほんと、何入ってるんだ? ってくらいに重い。
パッと手を放すと、葛西が慌てて鞄に走り寄り、俺に向かって頭を下げた。
「すみません、なんか、こんなとこまで」
「……別に」
「えと、あの……」
この期に及んで、どう切り出すか悩んでいる葛西。
ほんっとバカだなって、思いながら俺はドカッと遠慮なく腰を下ろした。
「早く出せよ。腹減っただろ」
「あ、はい……っ」
バタバタと葛西が持ってきたお弁当を広げて俺に差し出してきた。
弁当に、水分補給用の飲み物に、はちみつ漬けレモンなんてものまで用意して。
一体、コイツの野球観戦ってどういうもんなんだろうって疑問に思ってしまう。
けど、不思議とこれら全部、俺のためにしてくれたのかと思うと、素直に嬉しいと思った。
「コレ、おいしいですか?」
「ん、んまい」
「よかったぁ」
旨い、くらいしか返事のしようがなくて、気の利いた言葉も何一つ発しない俺の言葉に、いちいち喜ぶ。
その表情が、今日一番嬉しそうで……俺は――これが、見たかったんだ――って気が付いた。
どうしたらいいのか分からなくてずっと考えてたのに、こんなに簡単なのか? って思う気持ちと。
だけど、こんな……葛西が笑ってるだけで堪らなく嬉しくなる自分の気持ちとで、俺はなんだかわけが分からなくなった。
―――こいつは、俺にとっての、なんだ?
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