お人好し少年と言霊さん

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『ふむ……』 言霊さんは、 黒いノートに 黒いペンで 何かをメモしている。 ペンとノートからは 何か 黒い靄のような物が 揺らめいている。 ノートには ☆トミー観察日記☆ と 書いてあり 昨日の富永の 行動が記してあった。 AM7:47 駅構内で お年寄りの荷物を持ち 階段を登るのを 手助けする。 AM8:15 改札横で 切符をなくし 財布を忘れた 女子中学生に お金を貸す。 PM15:45 自転車の チェーンが外れて うまく直せない 男子中学生に 手を貸す。 PM16:27 公園で ケンカをしている 小学生男子グループ 小学生女子グループ の仲介に入り 仲直りさせる。 PM21:13 バイトの帰りに ケンカ中の カップルの間に入り 仲裁 警察が来て 場の収拾をつける。 PM21:53 酔っ払いのおじさんを 家まで送り届ける。 PM22:30 帰宅 学校で クラス委員の子が みんなに 押し付けられた仕事を 半分、手伝うと 申し出て 預かった仕事をこなし 欠席していた 生徒の為に ノートをまとめる AM0:28 お風呂に入り 就寝。 『……みればみるほど …素晴らしい ご病気ですね……』 富永の家の 屋根に座りメモを見る。 『しかし、 これだけして 見返りが何一つないとは…… 人間とは、 一体どんな価値観で 生きて居るのやら』 あざ笑いながら そう呟く。 『情けは、トミーさんの為ならず……ですね』 クスッと笑い 闇に消える。
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