幼馴染みという巨大な壁

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 “幼馴染み”なんてのは聞こえは良いが、そこに恋愛感情が入ると複雑な上に絶対的な障壁となる。    俺と舞雪だって例外じゃなかった。  舞う雪と書いて“まゆき”分かりやすいくらいの、冬に生まれた俺の幼馴染み。  互いに一軒家で、本当に絵に描いたような隣同士の俺と舞雪。当然、幼い頃から一緒に居る事が多かった。  幼い頃は親の都合が悪ければ一方の家が預かり、俺達は遊んだ。    小学校に上がれば登校も下校も大体一緒。まぁ……物心がついて男と女の気恥ずかしさが出てからは減ったけど。    そんなに都会って程でもないこの土地だから、当然のように中学も一緒。……まさか高校まで同じになるとは思わなかったけど。    俺と舞雪、一方が風邪で学校を休んだ時にプリントを届けるなんてお決まりのイベントも当然発生してた訳で。    高校に進学しても、俺達の両親は互いに忙しくも無い仕事をいいことに旅行に度々出かけ、最悪な場合は子供二人を残して四人で行く暴挙に出る始末。    どうせ家に一人しか居なくなるのだから、晩御飯と風呂はどちらか一方の家で済ませる事。との訳の解らない取り決めもかなり昔に決められていた。    いや、確かにそんな取り決めなんて無視してもバレないし、守る義務も無いんだけど……何故かちゃんとそれを実行してたんだよな俺と舞雪は。    だから俺はあいつの事なら色々知ってる。  好きな食べ物から嫌いな野菜、味の好みとか、舞雪なりのこだわりとか変な癖とかも。  いや、知り過ぎてしまった。だからこその、この距離感。崩れる事の無い、乗り越える事など到底不可能な壁が俺と舞雪の間にはある。    “幼馴染み”という近くて遠い薄っぺらい巨大な隔たりが。
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