幼馴染みという巨大な壁

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 そう、だから“幼馴染み”なんてただの同い年のお隣りさんの総称なんだよ。  なのに、それは友達以上恋人未満よりも難しい。    私と洋海だってそう。私よりも半年先に生まれただけの、ただの幼馴染み。  太平洋の洋に海で“ひろうみ”漢字の意味なんて無視したかのような夏男の名前。  だって意味的には二つとも海の事なんだから。  まっ、文字通りやんちゃで熱い男に育っちゃったけどね。    熱くて、やんちゃで、頑固でバカで。    だけど私が風邪引いた時は必ずプリントを届けてくれたり、今日習った事を教えてくれたり優しい一面もあったりして。    それでもそれは幼馴染みだから、その一言で片付けようとすれば片付いてしまう。そんな私と洋海の関係。    隣り同士だから当然中学校までは同じ学校だし、高校も偶然なのか必然なのかな……同じとこになっちゃったんだよね。    洋海と私の間にある奇妙な取り決めのお陰か、その性か。私と洋海は誰よりも近くにいた。一緒にいた。    洋海の好きな食べ物、嫌いな物、味の好み。  あいつの色んな所を私は知ってる。私の事をあいつが知ってるように、私だってあいつの知らない洋海を知っている。   だけどそれは“幼馴染み”だから。  男と女という関係を越えた、恋愛感情と真逆で紙一重の見えない壁。    私と洋海はそういう関係。    勝手にそう思い込んでいたのかも知れない。    私達の間に友情はあっても、恋慕う気持ちは無いって。
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