幼馴染みという巨大な壁

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 そんな風に思ったまま俺達は二十歳を過ぎ、互いに干渉する事も少なくなった。  この先に待つ就職活動という地獄。同時にやってくる卒業論文。自分の事に精一杯で、互いの事など気にも留めないだろう。そう思っていた。    簡単な理由として俺達二人の進路は少し違う。それは昔からの付き合いだ、就きたい職種の好みぐらい分かっている。  大学での専攻学科が違ったように、この先職場が同じになる事など有り得ない。    そんな諦めにも似た現実は日々着々と累積していった。    互いに会えば素っ気のない、なんとも他人行儀な挨拶。昔はもっと爽快な掛け合いだった。    会話になれば見栄か恥じらいか、当たり障りの無い会話が飛ぶ。腹の割った話などここ何年もしていない。    互いに恋人や想い人の存在を匂わせたり、あるいは最近知りあった人を自分の好みと照らし合わせた評価を言ったりなど……そんな事全部無意味だ。    舞雪の好みなんて前々から分かってる。俺が舞雪の好みを知ってるように、舞雪も多分俺の好みは分かってる。    分かっていて、知ってて、それでも無意味な行動を選択してしまう。    自分の気持ちに正直になれば答えはもう既に出ているはずなのに。    だがそれを壁は邪魔をする。    いや、本当は邪魔なんてしていないんだ。  例えその壁を乗り越えても、また次の壁を自分自身で造って行く手を阻む。  ただそれの繰り返し。    それ以上でもそれ以外でも無い定位置。  それが俺と舞雪の関係。
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