幼馴染みという巨大な壁

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 私はきっとそんな現実の関係から目を背けてた。  自分の素直な気持ちと向きあったら、きっとこの関係は壊れてしまう。  男女の仲でも、ただの友達でも無い。曖昧で、でも最も気兼ねなく話す事の出来る間柄。    “好きなの、付き合って”なんて言ったってどうするの?  付き合うって何。二十年も近くに居て、それで付き合うって……そんなの全然実感無いよ。    そうだよ。一緒に居て、遊んで、笑って、泣いて、怒ったり、喜んだり、一緒に買い物したり映画見たりご飯食べたり。  互いに同じ時を共有していく事なんて今までと何の違いも無いんだよ?    そんなの……リスクしか無いよ。  ケンカして口も利かなくて、それで結局別れたりして、そしたら何も残らないじゃん。  ただの友達? きっとそれ以下だよ。    そんな事になるんだったらケンカしても口利かなくなっても、私達の間に関係としてずっと残る“幼馴染み”の方がよっぽど良いよ。    そうやって私達は恐れてた。    それ以上の関係になるにはどうしても“幼馴染み”という関係を捨てなきゃいけないって。    そう思い込んでた。    他の誰かを好きになって、結婚して、家庭を築いて。   もう……何かやだ。    他の誰かを好きになるって、誰を?  家庭を築いて……それで子供を産んで育てるの?    そんなの、誰もいないよ。    何で?  何でそんな事を考えると必ず洋の顔が浮かんじゃうの?    洋は、洋はこんな時誰が浮かぶのかな?  私以外の誰かなの?    私、洋の事……好き、なの?  これがそうなの?    でもダメ。  ダメだよ。好きだって認めちゃったらもう後戻り出来ないよ。    洋……私の事、どう思ってるの?    ヒロ……。
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