36人が本棚に入れています
本棚に追加
季節は冬
すっかり闇に包まれた東京のどこかの一室に月明かりに照らされた一人の男と一人の女がいた。
女はカーテンのような純白の布のみを体に纏い、暗い部屋の中でその布が光を放つように白さを強調するようだった。
女は倒れる体を男に支えられながら口からは常人の物とは思えない黒い血を垂らしながらも微笑んでみせる。
「おい……どうした、何があったっ!?しっかりしろっ!!おいっ!?」
男の問いかけに答える気力も無いのか女は何も言わず、布の中から腕を伸ばし男の頬にゆっくりと触れる。その腕についた切り傷から僅かに機械のようなコードが出ていた事に男は驚愕した。
「あ、なたに…逢えて、幸せだった……」
「おい、何いって……っ!!」
縁起でもないない事言うなと言おうとする男の口に彼女は自身の唇をくっつけて塞ぐ。すぐ、唇、手とともに彼女は男の手から崩れ落ちていった。
「ぁ……あ……雪?……あ……あぁああああっっ!!」
男は涙を流した。その涙は女の顔に落ちゆっくりと床へ垂れて行く。
男は狂ったように泣いた、彼女を強く、強く抱きしめ、男は世界で一番大切な物を失った。
これが、別れであり、始まりだった……
最初のコメントを投稿しよう!