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「この刀は特殊ですから大丈夫ですよ。この刀は貴女の力の具現化なので力のない一般人には見えません」
『……って事は、この刀は私が受け取らない限り浮いてついてくると?』
「まぁ…そうなりますかね」
めんどくさい事は嫌い。平凡でいいんだ。平凡で死ぬ時がくればくたばればいい…
だけど…この刀を受け取るとは、その日常が壊れてしまう…!
「具現化したと言うことは、土地が貴女を土地神に選ばれたと言うこと……もう、知らん顔は出来ませんよ?」
『………』
何となく、分かっていた。
自分の中にある底の見えない何か。
不思議な力、分からない力。
その力は周りの人を傷付けるだけだと思っていた。
私の全てを壊してしまった力だから…。
私は、………。
『テシンさん…私は……この力を嫌っている』
「はい…」
『出来れば、普通に暮らして普通に死にたい…』
「………はい」
『だけどそれは……無理なのか?』
問い掛ければ、テシンは苦虫を噛んだような顔になって、地面に目を落とした。
「……っ…はい…」
『……っ…』
テシンの返事に、心が少し傷んだけど、私は泣かなかった。
だけど、目の前で座るテシンは大粒の涙を地面に落としている。
『ハハッ…何でアンタが泣くんだよ。アンタのせいじゃないんだろ?』
「だって……君がっ…泣かないからっ!本当は泣きたいのに…!泣いてるのにっ!」
子供のように泣くテシンの頭を優しく叩く。
『私は泣いてないよ。ちゃんとした神になるまでは……時間がかかるかもだけど…絶対に逃げないから』
気付いたんだ。逃げていた自分に…だから、覚悟を決めなくちゃいけないことも……わかった。
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