―第一章死体美学―

10/31
前へ
/94ページ
次へ
彼の家は、結構古い感じがする一戸建てだ。 昔から彼はここに住んでいる。 彼の両親は高校の時に死別したらしいが、遺産がかなり多かったので、1人で暮らすには十分だったそうだ。 「変わってないな」 「変わらない方がいいんですよ」 「引越しはしないのか?」 「まさか! こんな良いところから離れるわけがありませんよ」 昔から彼は物静かなのが好きらしい。 さっきの騒々しい雰囲気から一点、ここは山の中、民家はぽつりぽつりしかなく 周りはほぼ無音に包まれている。 音と言えば、ときおり風が鳴らす、葉っぱの音ぐらいだ。 私にとっては逆にそれが怖いのだが(特に夜) 「んじゃ、ま、お邪魔させてもらうか」 と私が玄関のドアに手を伸ばしたとき、彼が止めた。 「ちょっと、待ってください。実はついてきて欲しい所があるんですよ」 「?」 そう言うと、彼は家の裏側へと回りだした。 緑の雑草が邪魔をしてくる中、私はただ、江藤の後についていった。 家の裏側は、もはや公道とは呼べない道がさらに続いていた。 本格的に山の中へ突入である。 「おーい、江藤、どこまで……」 私が叫んでも、彼は無視して、先を進む。その姿はまるで宝を求めるトレジャーハンターのように見えた。 歩いて、数十分後…… 「ようやく着きました」
/94ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加