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彼の家は、結構古い感じがする一戸建てだ。
昔から彼はここに住んでいる。
彼の両親は高校の時に死別したらしいが、遺産がかなり多かったので、1人で暮らすには十分だったそうだ。
「変わってないな」
「変わらない方がいいんですよ」
「引越しはしないのか?」
「まさか! こんな良いところから離れるわけがありませんよ」
昔から彼は物静かなのが好きらしい。
さっきの騒々しい雰囲気から一点、ここは山の中、民家はぽつりぽつりしかなく
周りはほぼ無音に包まれている。
音と言えば、ときおり風が鳴らす、葉っぱの音ぐらいだ。
私にとっては逆にそれが怖いのだが(特に夜)
「んじゃ、ま、お邪魔させてもらうか」
と私が玄関のドアに手を伸ばしたとき、彼が止めた。
「ちょっと、待ってください。実はついてきて欲しい所があるんですよ」
「?」
そう言うと、彼は家の裏側へと回りだした。
緑の雑草が邪魔をしてくる中、私はただ、江藤の後についていった。
家の裏側は、もはや公道とは呼べない道がさらに続いていた。
本格的に山の中へ突入である。
「おーい、江藤、どこまで……」
私が叫んでも、彼は無視して、先を進む。その姿はまるで宝を求めるトレジャーハンターのように見えた。
歩いて、数十分後……
「ようやく着きました」
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