―第一章死体美学―

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「なんだ、これ……?」 少し遅れた私が見たものは、小さいシェルターらしきものだった。 周りの景観とは全く合わない人工の鉄の扉と、自然の洞窟がくっついた感じだ。 (こんなものが、ここにあるとは……) 山の中、誰にも見つからず、ひっそりと存在している建物は、まさに秘密基地と呼ぶに相応しいだろう。 江藤は扉の取っ手に手をかけて、私に言う。 「……ようこそ、私の“本当の部屋”へ」 彼は案内人かのごとく、扉を開け、私に先に行かせる。中は細長い通路になっており、さらに奥には下への階段が続いている。 私はそろりそろりと、中を進む。後ろには勿論江藤がいる。 ……通路内の床は鉄板を敷いただけみたいだ。歩く度にカンカンと音が反響する。 壁は自然のままを維持しているのかわからないが、岩でゴツゴツしていて、天井は電球が一定の間隔でぶら下がっているのだ。 私はただ、ただ驚きを隠せないでいた。 「まさか、こんな所があったとは……」 「昔の防空壕の跡地を大改造して作ったんですよ、表向きでは廃虚小屋となってますが」 「改造? そりゃまた大掛かりだな。って、どうして、ここを作ったんだ?」 「それはね………」
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