32人が本棚に入れています
本棚に追加
「なんだ、これ……?」
少し遅れた私が見たものは、小さいシェルターらしきものだった。
周りの景観とは全く合わない人工の鉄の扉と、自然の洞窟がくっついた感じだ。
(こんなものが、ここにあるとは……)
山の中、誰にも見つからず、ひっそりと存在している建物は、まさに秘密基地と呼ぶに相応しいだろう。
江藤は扉の取っ手に手をかけて、私に言う。
「……ようこそ、私の“本当の部屋”へ」
彼は案内人かのごとく、扉を開け、私に先に行かせる。中は細長い通路になっており、さらに奥には下への階段が続いている。
私はそろりそろりと、中を進む。後ろには勿論江藤がいる。
……通路内の床は鉄板を敷いただけみたいだ。歩く度にカンカンと音が反響する。
壁は自然のままを維持しているのかわからないが、岩でゴツゴツしていて、天井は電球が一定の間隔でぶら下がっているのだ。
私はただ、ただ驚きを隠せないでいた。
「まさか、こんな所があったとは……」
「昔の防空壕の跡地を大改造して作ったんですよ、表向きでは廃虚小屋となってますが」
「改造? そりゃまた大掛かりだな。って、どうして、ここを作ったんだ?」
「それはね………」
最初のコメントを投稿しよう!