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扉は開かれた。
が、真っ暗で中の様子は到底確認できない。
私はつい、江藤の顔を見る。
彼は“どうぞ”と言わんばかりに、私に行かせようとしているような顔をしていた。
そして、私は一歩踏み出し、部屋の中に足を踏み入れた。
この時点でわかる事は、独特な部屋の香りと床の材質が変わった事だ。
私が部屋の中に完全に入ると彼は、扉を閉めた。
通路内のわずかな電球の光さえ届かなくなったことで、完全に視界は黒一色となった。
「お、おい、何も見えないぞ」
暗い事は、私を不安にさせる。
「せっかちですねぇ、直ぐにつけますよ」
彼は部屋の明かりを点灯させるボタンを押した。
馴染み深い、切り替えの音と共に、視界が一気に明るくなった。
この間、僅か数秒足らずの事である。
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