―第一章死体美学―

3/31
前へ
/94ページ
次へ
私達は暇を見つけては、駅の近くにある安いレストランで議論をする。 端から見ると変に見えるかもしれないが、私と彼との長い付き合いの中では普通の事だ。 私はガーリックトーストとエスプレッソコーヒーを頼み、 彼は甘辛の鳥唐揚げを頼む。 そして、それらを頬張りながら、一つのテーマについて互いの意見をぶつけあうのだ。 端から見れば、その姿は些か滑稽に見えるかもしれないが、彼と私の長年の触れ合い方であり、普通だ。 この日、私はいつものようにテーマに基づいて私は切り出す。 「なあ、江藤。私が思うに恐らく、死体描写など残虐なシーンが犯罪に結びついているんだよ」 ちなみに彼の名前は江藤義隆と言う。今時珍しく黒髪の短髪で細長い眼鏡をかけている。 如何にも優等生らしい真面目な感じだ。 実際、マジメなのだが。 「それに因果関係はありません」 さっぱりと彼は言い放つ。 私は砂糖が足りなかったので、一袋開けて、注ぎ込む。 「あくまでも、犯罪“行為”とは自分の理性によるものです、死体描写が影響しているとはとても考えにくいですよ」 私はスプーンでコーヒーをかき回しながら聞いていた。 いつも思うのだが、彼は友達でも敬語を話す。何故だがわからないが、タメ口でいいよと言っても敬語になる。 まあ、それは置いといて、私は江藤に対する反論を考えねば───。
/94ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加