32人が本棚に入れています
本棚に追加
「どういう意味だ?」
「……、死体シーンが悪いというのは偏見に過ぎないということですよ」
そう言って、彼は店員に水のおかわりを頼んだ。
「死体シーンは偏見の目で見られているということかい?」
やがて、ウェイターの1人が水を持ってやってきた。まだ、私の水はあったがついでに入れてもらった。
「その通り! くだらないメディアが植え付けた間違った認識なんですよ」
「いやいや、間違った認識をしてるのは江藤の方じゃないのか?」
そう言った途端、江藤が鋭い眼光を見せたので、私は反射的に目を反らした。
「何故です?」
「死体シーンは人の死を冒涜していると思うからだよ。ほら、一般的に言うだろ、グロいって。つまり精神的に悪影響ってことさ」
私は強気に出たが、江藤と視線を合わせる事ができなかった。
怯えているのだろうか?
昔からの親友とも呼べる人に?
この、心の奥深くから来る芯の通った感情は何なのだろうか?
わからなかった。
私はテーブルにあったおしぼりを使ってコップが生み出した、水滴を丁寧に拭いていた。
最初のコメントを投稿しよう!