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「やっぱり、あなたもあっち側なんですね……」
私は江藤の言葉に一瞬、固まった。
彼が残念そうに言った言葉は、私の中に彫刻で刻まれた感じがした。
(あっち側……?)
“あっち側”って何?
どうやら、江藤の中で何かしらの基準があるらしい。
「……? 江藤、あっち側って……」
私が江藤に聞こうとしたとき、彼は突然は立ち上がった。
私は必然的に視点を顔を彼に合わせる。
「今週の日曜日、空いてますよね? 私の家に来てください、そこでお話しましょう」
「え?……あ、ああ」
彼の突然の誘いに不意打ちを食らった。いつもはこんな強引な事は言わないのだが……。
「それに、見せたいものもありますからね。では、私は先に失礼しますよ。あ、ここはオゴリます」
そう言うと彼はテーブルの上にあった伝票を持ってレジに向かった。
追いかける間もなく、彼が清算を済ました後、さっさと外に出ていってしまった。
あまりの唐突さに彼の後ろ姿しかみる事ができなかった。
最終的に、1人食べ終わった皿や飲みかけのコップが残っている席に取り残された形となった。
暫く呆然とその場に座っていたが、取りあえず外に出て、一服吸うことにした。
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