―第一章死体美学―

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運命を変える日曜日、私は江藤との待ち合わせ場所に4分早く着いていた。 待ち合わせ場所は、私もよく行く有名なビデオレンタル店。 駅で待ち合わせするよりもここのが近い。 と言っても前は大通り、車の通行量は激しく、走る音やクラクション音が絶え間なく鳴る。 向かい側に野球グラウンドがあるので、人の声と相まって、尚更騒がしい。 そんな中、私は少し胸の高鳴りを確かめながら待っていた。 彼が何を伝えてくれるのか、何を見せてくれるのか。 正反対の感情を持ちながら、好奇心を擽られる。 簡単に言えば、“怖いもの見たさ”という奴だ。 と約束の時間。 「やあ、待たせましたね」 普段通りの格好で、彼は現れた。 私はああ、大丈夫、と頷き、彼と一緒に大通りを車が赤で引っかかっている隙を見て渡る。 「けど、久しぶりだね、江藤の家に行くのは」 「大学以来ですからねぇ」 彼の家は大学に割りと近い場所にある。勿論、大学は一緒だったので、帰りに寄った事もあった。 今となっては懐かしい思い出だ。 懐かしい思い出話を喋りながら、どんどん歩いていく。 「この坂、きつかったよな」 「ええ」 大学は山側にあるため、急な坂道は外せない。自転車じゃ登れない程の坂だ。 昔は軽く登っていたが、今は………もはや笑うしかない。 大学を過ぎ去り、さらに山側へと向かっていく。ここまでくると、民家も少ない。 私と江藤は汗をかきながら、ようやく彼の家に着いた。
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