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蒼白い月光を細身の体に纏わりつかせ、ひとりの男が端然と佇んでいた。
いや、男と呼ぶにはためらわれるような、中性的な……むしろ、女性的といってもいい、繊細な美貌の若者だった。
年は朔夜と同じか、ひとつ二つ上といったところだろう。
透けるように白い肌は、どこか異国の血を感じさせる。
柔らかな栗色の髪がふわりと額にかかり、若者のたおやかな美貌をいっそう際立たせていた。
切れ長の瞳は、髪と同じ濃い茶色だ。
スッと細い鼻梁も、微笑を刻んだ唇も、上品そうな印象を見る者に与える。
まるで絵から抜け出てきたかのような、浮世離れした美貌だった。
だが、男たちが毒気を抜かれたような表情で、呆気にとられたように固まっていたのは、若者の神秘的な美貌のせいばかりではなかった。
この緊迫したシーンにはあまりにも場違いな、いかにも楽し気な無邪気な笑顔に、男たちのみならず、朔夜も戦意を喪失して、声もなく正体不明の相手をみつめていた。
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