第1章

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「あ~あ、行っちゃった。もう少し稽古の成果を試したかったのにな」 逃げていく男たちを見送って、若者が残念そうにため息をついた。 朔夜はじろりと若者を睨みつけた。 「余計な真似しやがって。誰も助けてくれなんて頼んじゃいねぇよ。あんな奴ら、俺ひとりで倒せたのに」 しかし、若者は、朔夜の言葉など聞いていないようだった。 どこか心もとない表情で、月を見あげている。 「聞いてんのかよっ、おいっ!」 朔夜が声を荒げると、若者はふいにふりむいて、人懐こい笑顔を見せた。 「今夜、泊めてくれないか」 「あ?ざけんなっ!なんで俺がおまえを泊めなきゃなんねぇんだよ!寝言は寝てから言えっ!」 「こっちに来たばかりでね。行くあてがない」 「ホテルに行けばいいだろうがっ!」 きつい朔夜の眼差しにたじろぐ様子もなく、若者は、ふわりと朔夜の両肩に手を乗せた。 「君が気に入った。私たちは、いい友達になれそうだ」
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