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「あ~あ、行っちゃった。もう少し稽古の成果を試したかったのにな」
逃げていく男たちを見送って、若者が残念そうにため息をついた。
朔夜はじろりと若者を睨みつけた。
「余計な真似しやがって。誰も助けてくれなんて頼んじゃいねぇよ。あんな奴ら、俺ひとりで倒せたのに」
しかし、若者は、朔夜の言葉など聞いていないようだった。
どこか心もとない表情で、月を見あげている。
「聞いてんのかよっ、おいっ!」
朔夜が声を荒げると、若者はふいにふりむいて、人懐こい笑顔を見せた。
「今夜、泊めてくれないか」
「あ?ざけんなっ!なんで俺がおまえを泊めなきゃなんねぇんだよ!寝言は寝てから言えっ!」
「こっちに来たばかりでね。行くあてがない」
「ホテルに行けばいいだろうがっ!」
きつい朔夜の眼差しにたじろぐ様子もなく、若者は、ふわりと朔夜の両肩に手を乗せた。
「君が気に入った。私たちは、いい友達になれそうだ」
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