第1章

16/22
前へ
/439ページ
次へ
「おい」 つかつかと若者に歩み寄り、朔夜はぶっきらぼうに声をかけた。 「ボロアパートでよけりゃ、泊めてやるよ」 若者の顔が、パッと輝いた。 「感謝する」 「ただし、ひと晩だけだぞ」 らしくない自分の行動に、急に照れ臭くなって、朔夜はわざと仏頂面を作った。 若者から顔をそむけ、大股に歩き出す。 ひどく嬉しそうな表情で、若者は朔夜と肩を並べた。 「名前、聞いてなかったな」 「朔夜だ」 「いい名前だな」 「うるせぇよ」 「照れてるのか?」 「ちげぇよっ!」 朔夜の剣幕を気にする素振りもなく、若者は楽しそうに、ふふ、と笑った。
/439ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1226人が本棚に入れています
本棚に追加