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「おい」
つかつかと若者に歩み寄り、朔夜はぶっきらぼうに声をかけた。
「ボロアパートでよけりゃ、泊めてやるよ」
若者の顔が、パッと輝いた。
「感謝する」
「ただし、ひと晩だけだぞ」
らしくない自分の行動に、急に照れ臭くなって、朔夜はわざと仏頂面を作った。
若者から顔をそむけ、大股に歩き出す。
ひどく嬉しそうな表情で、若者は朔夜と肩を並べた。
「名前、聞いてなかったな」
「朔夜だ」
「いい名前だな」
「うるせぇよ」
「照れてるのか?」
「ちげぇよっ!」
朔夜の剣幕を気にする素振りもなく、若者は楽しそうに、ふふ、と笑った。
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