第1章

18/22
前へ
/439ページ
次へ
部屋に入って携帯を開くと、案の定、麗子からメールがきていた。 今夜は残業があるので、アパートに行くのが遅くなると、たくさんの絵文字を交えて書いてあった。 朔夜は、来なくていいとそっけない返信を返した。 「何だ、それは?」 美織がいつの間にか朔夜のすぐ側に立ち、携帯を覗きこんでいた。 「見るなよっ、人のメール!」 「メール?」 美織は、キョトンと小首をかしげた。 とぼけているようには見えない。 (携帯を知らねぇのかよ、こいつ……) 朔夜はふと、先ほどの美織の言葉を思い出した。 こちらに来たばかりだと、彼は言った。 どこか外国で暮らしていたのだろうか。 だが、大抵の国では、携帯ぐらいあるはずだ。 「おまえ、どこから来たんだよ?」 美織ははぐらかすように、ふっと笑った。 追及しようとして、朔夜はやめた。 どうせ、明日には別れる相手だ。 素姓なんて、どうでもいい。
/439ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1226人が本棚に入れています
本棚に追加