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部屋に入って携帯を開くと、案の定、麗子からメールがきていた。
今夜は残業があるので、アパートに行くのが遅くなると、たくさんの絵文字を交えて書いてあった。
朔夜は、来なくていいとそっけない返信を返した。
「何だ、それは?」
美織がいつの間にか朔夜のすぐ側に立ち、携帯を覗きこんでいた。
「見るなよっ、人のメール!」
「メール?」
美織は、キョトンと小首をかしげた。
とぼけているようには見えない。
(携帯を知らねぇのかよ、こいつ……)
朔夜はふと、先ほどの美織の言葉を思い出した。
こちらに来たばかりだと、彼は言った。
どこか外国で暮らしていたのだろうか。
だが、大抵の国では、携帯ぐらいあるはずだ。
「おまえ、どこから来たんだよ?」
美織ははぐらかすように、ふっと笑った。
追及しようとして、朔夜はやめた。
どうせ、明日には別れる相手だ。
素姓なんて、どうでもいい。
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