第2章

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日曜日の昼さがり。 姫羅(きら)は、恋人の雪彦(ゆきひこ)と、港の見える丘公園に来ていた。 デートスポットとして知られる美しい公園は、大勢のカップルで賑わっていた。 横浜育ちの姫羅には、うんざりするほど馴染みの深い場所だったが、雪彦と一緒だと、目に映るものすべてが新鮮に感じられ、何か特別な場所のように思えた。 初冬の冷たい風が、姫羅の栗色の巻き髪を、そっとなぶって通り過ぎる。 道行く人々が、チラチラと姫羅に遠慮がちな視線を送るのは、姫羅が人形めいた可愛いらしい顔立ちをしているからだった。 透けるように白い肌。 焦茶色の大きな瞳。 長く揃った睫。 スッと細い鼻梁。 やや薄い、小さな唇。 可憐、という言葉がぴったりの、愛らしい美貌だった。 23という年齢よりも、若干若く見える。
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