第1章

8/22
前へ
/439ページ
次へ
軽く体(たい)を開いただけでそれをかわし、朔夜は目にもとまらぬ速さで相手の腹を蹴りあげた。 蛙がつぶれたような声をあげて、男がうずくまる。 間髪を入れず、左側から殴りかかってきた男の顔面に、ふりむきざまに右ストレートを叩きこむと、朔夜は流れるような所作で、背後から襲いかかってきた男に回し蹴りを浴びせた。 一瞬のうちに、三人の男が地面に転がる。 あまりの朔夜の強さに、怯んだように、男たちが凍りつく。 「手応えがなさ過ぎるぜ。もっと強い奴はいねぇのかよ」 息ひとつ乱さずに、朔夜はなおも挑発した。 べつに、喧嘩が好きなわけではない。 だが、売られた喧嘩は買う主義だ。 目つきが悪いせいか、喧嘩を吹っかけられることも多かったが、今まで一度も負けたことがなかった。 特に格闘技を習ったわけではないけれど、身ごなしが敏捷なのと、細い割に意外とパンチ力があるせいで、圧勝無敗を誇っていた。
/439ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1226人が本棚に入れています
本棚に追加