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「前からお前を見て思っとったったい。目が死んどる。何かしたいことがあるんやないと?」
店長に話してみようと思った。
本当はバスケがしたいこと。
挫折してバスケをやめてしまったこと。
自分が凡人であること。
「でもバスケなんて日本人がしても、未来無いんですよ。だから、もういいんです。」
「よし、お前クビたい!」
「えっ?」
「だから、クビだって。」
朱鷺は意味わからずに呆然としてしまった。
すると、店長はまた口を開く。
「何も挑戦してないお前に、諦める権利なんかない。まだお前は二十歳なんだ。今挑戦しないと、本当にしたくてもできなくなるぞ。」
「いや、でも俺凡人なんで無理ですって。」
「凡人ってなんなんだ?凡人ってのは平凡な人って書くだろ。ならお前は世間では平凡と言われる事を全てできる人になれよ。凡人で結構!お前は、凡人の中の凡人になれ!!」
言い返そうとしたが、一歩手前で辞めた。
そして、何か吹っ切れた気がした。
朱鷺の顔を見た店長は、最後にこう付け加えた。
「挑戦してダメなら俺のところにまた来い。その時は、お前を正式に社員として雇ってやるたい。」
「‥‥‥ありがとうございます。」
嬉しかった。
久しぶりに人の温かみに触れた気がした。
「今までお世話になりました!」
「おう!なら、またな。」
店長は車に乗り込み、帰って行った。
『凡人の中の凡人になれ!』
この言葉が頭の中でグルグル駆け巡っていた。
その日、残り2つのバイト先に連絡し、辞めさせてもらった。
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