第1章 凡人の中の凡人

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「前からお前を見て思っとったったい。目が死んどる。何かしたいことがあるんやないと?」 店長に話してみようと思った。 本当はバスケがしたいこと。 挫折してバスケをやめてしまったこと。 自分が凡人であること。 「でもバスケなんて日本人がしても、未来無いんですよ。だから、もういいんです。」 「よし、お前クビたい!」 「えっ?」 「だから、クビだって。」 朱鷺は意味わからずに呆然としてしまった。 すると、店長はまた口を開く。 「何も挑戦してないお前に、諦める権利なんかない。まだお前は二十歳なんだ。今挑戦しないと、本当にしたくてもできなくなるぞ。」 「いや、でも俺凡人なんで無理ですって。」 「凡人ってなんなんだ?凡人ってのは平凡な人って書くだろ。ならお前は世間では平凡と言われる事を全てできる人になれよ。凡人で結構!お前は、凡人の中の凡人になれ!!」 言い返そうとしたが、一歩手前で辞めた。 そして、何か吹っ切れた気がした。 朱鷺の顔を見た店長は、最後にこう付け加えた。 「挑戦してダメなら俺のところにまた来い。その時は、お前を正式に社員として雇ってやるたい。」 「‥‥‥ありがとうございます。」 嬉しかった。 久しぶりに人の温かみに触れた気がした。 「今までお世話になりました!」 「おう!なら、またな。」 店長は車に乗り込み、帰って行った。 『凡人の中の凡人になれ!』 この言葉が頭の中でグルグル駆け巡っていた。 その日、残り2つのバイト先に連絡し、辞めさせてもらった。
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