第1章 凡人の中の凡人

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車に乗り込み、バイト先に向かう。 しかし、今朝の夢のせいでモヤモヤしたままであった。 「バスケは辞めたんだ。もう考えたって一緒だろ。それに俺もう20になったんだ…」 ひたすら頭から消そうとしたが、つい昔のことを思い出してしまう。 ────高校時代。 彼は小学校の頃から毎日練習してきた、たった一つの“武器”で福岡県立宮本高校に入学後、1年でスタメンになり、エースとして騒がれた。 俺の“武器”は無敵だと思っていた。 毎年1回戦レベルの宮本高校は県大会の準決勝まで勝ち上がっていた。 今までの試合で大活躍だった俺は会場で有名になっていた。 「いよいよ準決だぞ」 「宮本高校対博多第三高校かー」 「博多第三が圧勝だろ?」 「いや、宮本には期待のルーキー、黒澤 朱鷺(クロサワ トキ)がいるんだ」 「あー、朱鷺はすげー。」 俺は調子に乗っていたのかもしれない。 博多第三高校と闘うまでは。
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