日常から非日常へ

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Am0:50 「完売致です!ありがとうございました!さぁ、野郎共!部屋に帰ってエレクトしやがれぇぇぇ!!!」 シャッタの閉まった店舗の前、横に長いテーブルの向こうで赤色のハッピを着た店員が深々と下げた頭を上げ叫ぶ。 此処は日本最大の電気街……もとい、世界最高峰のオタクの聖地秋葉原。 その深夜販売会場である。 周囲では俺と同じく、深夜にも拘わらず初回限定版のエロゲーを求め集まった数十人の猛者達が店員の言葉に雄叫びを上げているところだ。 今は夏だが、季節の暑さとは違う熱気が辺りを支配する中でもちろん俺も叫ぶ。 左手に非実在幼女(設定は女子高生)の描かれた箱を抱え、王者の星を掴み取らん如く荒々しく振り上げられた右手達は、晴れた夜空に似つかわしくない異様な雰囲気を作り出していた――― ◇◆◇◆◇ 「さて、新たな俺の嫁に逢いに行くか」 木造二階建ての一階にある自室に戻った俺はパソコンを起動してディスクトレイを開く。 パッケージから非実在幼女が描かれたCDを取りだしトレイに挿入。 指示に従ってインストールすれば、画面には非実在幼女が「もう少しだよお兄ちゃん」と励ましてくれる。 インストール率50%を越えた辺りで俺はあることに気付いた。 懐かしのポストペットがメールの受信を伝えていたのだ。 インストール中にバックグラウンドでの操作は重くなる原因なので普段はしないところだが、この時の俺は何を思ったのか受信メールを確認する為にメールフォルダを開いた。 未開封のメールが二通ある。 取り敢えず古い方の件名を確認すれば…… 『体が疼くの…貴方の肉棒で慰めて』 はい、即ゴミ箱行き。 この手の業者は何処からアドレスをゲットするんだか。ウザくて仕方ない。
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