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「……アーサー」
禊が後ろから俺を抱き締めた。
俺は禊の頭を優しく撫でながら
「どうした?」
と返した。
禊は口をギュッと強く結び、作り笑いを浮かべた。
「リリーがね、帰ったら本を読んで欲しいんですって。
読んであげてくださいね」
禊はそう言ったが、何だか無理をしているのは見えていた。
「……禊?
任務があっても俺はちゃんと帰ってきただろ?
お前たちを残して死んだりしないよ」
禊と向かい合って頬を優しく撫でれば、禊の目は潤み、頬は赤くなっていた。
そして抱き締めあった。
「っ遅刻しちゃいますね。スーツはアイロンかけてありますから」
禊を離すと、俺は手早く準備を済ませた。
スーツに腕を通し、手袋をはめ、玄関に立つ。玄関にはハリーを抱いた禊、その横にはリリー。俺は一人一人抱き締めた。
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