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足は震え、首は固まり、目からは涙をこらえていた。 僕に気づいた駅員が「大丈夫ですか?」と言ってくる。 僕は「はい」と答える。 ただ、それだけで自殺じゃないという短い言葉が息がつまり言えない。 人のこんな死に方を見たのは初めてだし、また母もこうやって死んでいったと思うとあまりにも残酷で酷すぎるのではないかと思ってしまう。 僕は帽子を被った男性が去った方向を見る。 彼の姿はない。 「もしかして、身内の方…」 と駅員が聞きづらそうに僕に聞いて来た。 僕が違いますと言うとほっとした様子を見せてきた。
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