8/19
前へ
/48ページ
次へ
それでも僕は電話をかけ、バイト先の店長の声が聞こえる。 「はい、居酒屋テンテン。俺は店長です」 相変わらず気持もやる気が全く感じられない声だった。 僕が「あ、鷹橋です」言うと「おー、どうした?」と店長は鼻でもほじっているのか鼻声で答えてきた。 「あの、今電車で人身事故が起きて通勤時間には間に合わなそうなんです」 「あー、そうなのか。大変だな」 店長は大変そうなんて少しも思っていない声のトーンで返してくる。 「それを伝えに電話したんですけど、大丈夫ですかね」 「大丈夫だろ。こんな小させぇ居酒屋に夕方から来るなんて頭おかしい奴だけだ。それに平日なら実際、俺一人でもやっていけんだよな」 そう言われると今まで僕が仕事してきたことは無意味なのかなんて思ってしまう。
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加