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「まあ、確かにそういうことが多いですが、それだけで何かあったかを判断するのは早計なのではないでしょうか」
言葉を選び、なるべく自分の情報を与えず「嫌悪感」だけを前に押し出す。
「そうか、悪かったね。いや、ないならないでいいんだ。でもさ、やる気と言うか覇気と言うかそんな感じのモノはないよね?」
何だこいつは。どうにかして僕を欝や無気力病にでも担ぎあげたいのだろうか。
「ええ、まあ」
話がややこしくなりそうなので適当に生返事を返しておく。
「そうか、大変だよね。もしなにかあったらここに相談しな」
渡されたのは精神カウンセリングのご案内と大きくかかれた手紙だった。内容はカウンセリングの必要性を事細かに書き記した怠惰なもので特に面白そうなものではない。寧ろ精神病患者扱いをさせられて非常に不快なモノだった。
「ありがとうごさいます」
皮肉をたっぷり込めて言い放つ。
「それじゃ、また明日」
一体、今の面談に何の意味があったのだろう。ただ不快になっただけである。
紙を丸め、ズカズカと外へ出ようとすると、またもや山中の爺さんに呼び止められた。
山中の爺さんは愛用の可愛らしいクマの書かれたマグカップをクイっと持ち上げる。
どうやら、一杯のんで行けということらしい。少し迷いつつ、山中の爺さんの机へ元へ行く。
暫くすると、山中の爺さん給湯室から二つのマグカップを持って現れる。爺さんにコーヒーを飲まされるのはこれで何杯目だろうか。
爺さんはマグカップを一旦おき、パイプ椅子を開いて僕を座らせる。茶会が趣味らしく、よく生徒とコーヒーを飲んでいるらしい。
爺さんが用意してくれた、サンタの描かれたマグカップは客人用のマグカップ。口をつけると、僕好みの最早カフェオレという液体が中に入ってくる。
「カフェインには覚醒作用があるらしいぞ」
唐突に枯れた声で話しかけられる。
「話。聞いてたんですか」
「まぁ、な」
爺さんは右側の口角だけをニヤリとあげる。なにやら楽しいらしい。
「どうか、しました?」
「似たやつがおると思ってな」
「爺さんのお気に入りですか?」
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