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職員室を後にすると僕は教室へと向かった。
人を待ち合わせているからだ。
自分の教室へと歩いている最中、校庭や校舎内から様々な声が聞こえてくる。主に部活動に興じる生徒達のものだ。
僕も2ヶ月前までは部活に属していたのだが、とある理由によってやめてしまった。2ヶ月の生活の懐かしさや、今の自分との遠さを感じ、僕はしばらく足を止めてその声を聴き入ってしまっていた。
「ちょっと、智!何やってんの?」
唐突に声をかけられる。こいつは一村涼子。僕の幼なじみ。教室で待たせていたのもこいつ。どうやら暇に耐え兼ねて、探しに来てしまったらしい。
「悪い。……ちょっと色々思い出してた。」
「そう?でも、あまり考え過ぎは駄目よ?今日もそのせいで呼び出されてたんでしょ。」
「まあ、そんなとこ。かな?さて、そろそろ帰ろか。」
「こら、話そらさないっ。ちゃんと約束して?もうくよくよしないって。涼子おねぇちゃんに」
涼子の顔が近づいてくるにつれて女子特有の甘い香りが漂ってくる。この何とも言えない甘い香りが少なからず僕の鼓動を高鳴らせる。
「涼子おねぇちゃんなんてよく恥ずかし気も無く言えるな。同学年で9ヶ月しか違わないのに」
「9ヶ月違えば大した差よ?それに智だって私の事涼子おねぇちゃんって呼んでたじゃない。」
「そ、それは子供の頃の話だろ?!」
「いいのっ!とにかく約束して?」
「わ、解った、解った。解ったから!約束すりゃいいんだろ?約束すりゃ。もうクヨクヨしません!はい、これでいいだろ?」
「全く。可愛げのない奴。でも、いい子。素直な子はおねぇちゃん好きよ?」
そういいながら頭を撫でてくる。全く、卑怯な奴だ。
唐突だが。僕こと南條智は一村涼子の事が好きだ。好意的とかそういう意味ではない。恋愛的に彼女の事が好きだ。いつからだったかは覚えていない。ただ、いつも自分を守ってくれた彼女。その彼女の姿は常に僕の憧れであり、それがいつしか恋愛感情へと変わっていた。成長するに連て、キスしたいとか、抱きたいとか、その思いは大きくなっていった。だからこれは間違いない。
僕こと南條智は一村涼子の事が好きだ。
恋愛的な意味で。
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