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「へぇ、旅してんのか?」
やたら絡んでくる。
「…なぁ、よかったらなんで旅してんのか聞かせてくんねぇ?」
龍侍の顔つきが急に真剣な顔になった。
同一人物かと疑うほど大人びている。
「…いえ…他人に話せることじゃないんで」
その瞳が怖かった。
優しくも力強く頼ってしまいそうなくらい暖かい瞳。
だけどこれは私の問題。
他人に話せることではないし相手は上級魔族…
ひとつ間違えればこの人にも危険が及ぶ。
「いえ…だいじょ」
「こっちこいよ」
私の声を遮り手を引っ張られた。
建物の中に連れていかれると奥にあるソファーに座らされた。
「大丈夫じゃないよな?華菜の顔、すごく辛そうだ…それにもう自己紹介したんだ、俺達は他人じゃない。」
龍侍はニッと笑った。
その瞬間私の頬になにかが流れた。
私はなぜ泣いているんだろう。
恥ずかしい。
でも恥ずかしくない。
まるで心の中でぐるぐる巻きにされていたものが取れたような…
そんな私を龍侍は落ち着くまで優しく頭を撫でてくれた。
やっと落ち着いた私は龍侍に私に起きたことを話した。
これを聞いたらきっと怯えるだろうと思った。
でも龍侍は怯えるどころか目でみてわかるほど怒っていた。
「なんだそいつ!家族を人質に華菜を脅すなんて!!ぜってー許せねぇ!!」
龍族は家族や仲間を命より大事にする。
まだ会ったばかりなのにこんなに怒ってくれるんてなんだか嬉しかった。
「俺もついてく!」
龍侍はいきなり立ち上がるとそう言った。
「え…えー!?」
なぜ龍侍がついてくるのかわからなかった。
「だめだよ、龍侍に迷惑かかっちゃう」
「いいんだよ。そんなやつ倒しちゃえばいいんだ!」
龍侍の力強い言葉がうれしい。
でもいいのだろうか…
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