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茜色の夕焼け時に生を受けた。そんな単純な理由で茜と名付けられた。 茜の産まれた所は、西日本の島。里帰りしていた母の郷里だった。 周りには海が広がり、自然に満ちた島が茜は好きだった。 その島の名前は、海島。 太陽が反射する水面。 銀色の月が浮かぶ様。 動物たちの伸びやかな姿。 虫たちの軽やかな歌声。 ここには、大きなショッピングモールも楽しげな遊園地もないけれど、この島を出たいと思ったことはない。 どこまでも広がる地平線。それはまるで、果てしなく続く一本の道のように。
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